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「世界征服など、そんなに簡単ではないよ」 呆れたように言うシュナイゼルだったが、その顔はどこか強張っていた。解っているのだ、ルルーシュにはそれが簡単なのだと。各政庁を落とし、各国代表を捕らえ、強固な守りの中にいたブリタニア皇帝の暗殺。そしてこの凶悪な大量破壊兵器。それらが既に示されてしまったのだから。 『成程、兄上は未だ理解できないらしい。では、もう一つ落とすとしましょう、断罪の光を。そうですね、丁度西南西の方角に無人島があるあそこがいい』 示された場所には、島とは呼べないような岩礁群があった。 そこに、先ほどと同様の光が音も無く現れた。 ミサイルが飛来した気配もなく、突然に。 目がつぶれてしまうほどの強烈な光は円を描き、岩礁を中心に広がっていく。 岩を、海を侵食していく無慈悲な光を、まるで夢か幻のように感じながら茫然と見つめていると、冷酷な声が耳に届き、同時に現実に引き戻された。 『リミッターを解除すれば直系100kmを焼失させることが可能だ』 直系10kmほどまで広がった光は急速に消滅し、そこに現れたのは巨大なクレーター。失われた場所へと、海水が流れ込んでいく姿から、たった今、本当に消え去ったのだと誰の目にも明らかだった。映像による視覚トリックでも、CGを用いた偽りの映像でもなく、今まさにこの時、あの岩礁は地図の上から消滅した。 ハッキングされたテレビにも、リアルタイムでこの映像が送られ、荒れ狂う波を見た人々は恐怖から悲鳴を上げた。あれが都市に打ち込まれれば。直系100kmが消失するのだ。それは、一瞬で国一つを消し去るという事に他ならない。 『お前たちに選択権は無い。今この時より、世界は私の支配下となる。我が支配を拒否する国があるなら、手をあげるといい』 カメラは再び、首相たちの方へと向けられる。 テロリストに銃口を向けられた状態で、このような映像を見て、手をあげる者などいはしない。逆らうという事はすなわち、自国を消滅させることに他ならない。 『ククク、今この時より、全ての国はこの私、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの奴隷だ。私の目が黒いうちは、どのような事であれ逆らう事は許さない。これに賛同する国は手をあげよ』 今度は、全国が手をあげる。ブリタニアの皇族であり、第一皇位継承権を持っていたオデュッセウスもその一人だ。上げなければ、国民に害が及ぶのだから仕方がない。この姿を、多くの国民が唇をかみしめながら見つめていた。 『よろしい』 悪魔の力を用いて世界の支配権を手に入れた魔王は笑った。 手をあげ続ける各国代表の映像と、魔王の笑い声は、世界中の人々の目に、耳に焼きついていく。 『では、我が母にして先代ブリタニア帝国皇妃マリアンヌに命令する。これより我々はブリタニアに帰還する。先導せよ』 「・・・イエス、ユア・マジェスティ」 元皇帝の妻の一人、マリアンヌ皇妃は、悪魔と化した自らの息子に頭を垂れた。 これから、彼らが行うべき事は一つだけ。 ルルーシュの隙をつき、悪魔の兵器を無力化し、ルルーシュを捕縛あるいは殺害すること。そのためには、どんな屈辱も受け入れる。シュナイゼルもコーネリアも、まず狙うべきはルルーシュ達があの戦艦から降りた時だと狙いを定めていた。 各国も口には出さないが、そのために動き始めた。 だが、その程度の思惑など、ルルーシュには通じない。 『言い忘れていたが、フレイヤは私の意思だけで世界各国に発射可能だ。そして、私の命が尽きた時も同様に、死の光は世界を覆うだろう。もし、私の命を狙うというならば、各国の都市が消滅する覚悟を持って行う事だ』 |